貯蓄のパラドックス 2017 3 18
「国民が貯蓄をすればするほど、経済不振を招く」
2017年3月18日の読売新聞には、このような記事がありました。
「増える貯蓄、進まぬ投資」
「個人金融資産 初の1800兆円」
個人が預金や現金を重視する姿勢が続き、
個人(家計部門)が持つ金融資産のうち、
「現金・預金」の残高が過去最高を更新した。
株式は1年前と比べて減少し、
投資信託は伸び悩んだ。
(引用、以上)
経済学的に言えば、
国民が貯蓄をすればするほど、経済は低調となっていきます。
これは、国民が消費をしないで、貯蓄をするということだからです。
それでも、高度成長時代は、
国民が貯蓄に励んでいたにもかかわらず、
経済は、好調でした。
その理由は、銀行に積みあがった貯金を原資として、
銀行が積極的に融資をして、産業を育成・拡大させてきたからです。
今の銀行は、「魅力的な融資先がない」として、
融資には消極的で、最近までは、ひたすら国債投資に集中していました。
国債の利回りが低下すると、
慣れない外債投資に手を出して、損失を抱えていると噂されています。
私は、何度も書いていますが、
日本の銀行の融資方針は、
不動産という担保があれば融資をして、
そういう担保がなければ融資をしないというものでした。
それに対して、私は、不動産ではなく、
ビジネスモデルを評価して融資すべきであると書きました。
かつて、日本では、不動産の価格は、
右肩上がりに上昇を続けるという「神話」がありました。
だからこそ、不動産担保融資にも、それなりの理由があったのです。
しかし、20年以上前に、不動産バブルが崩壊して、
それ以来、銀行が、いや銀行業務が「漂流」することになったのです。
そして、日本経済も「失われた20年」と言われました。
一方で、ビジネスモデルを評価して融資する外国銀行には、
「おいしいところ」を持っていかれてしまうという「金融情勢」も続いています。
さて、政府は、国民に「貯蓄から投資へ」、
つまり「貯蓄から株式へ」と呼びかけていますが、
株式投資が活発になったからといって、経済まで好調になるとは限りません。
日経平均株価などの株式指数が過去最高を更新しても、
インフレ率は低いままだったということは、過去にもありました。
これは、現金や貯蓄が過去最高を更新しても、経済は不振だったと同じようなもので、
いくら株式指数が過去最高を更新しても、
国民が消費活動をしなければ、経済は不振のままです。
要するに、国民が持っている資金が、
「貯金市場」に流入するか「株式市場」に流入するかの違いだけです。
少子化と高齢化が進行する日本においては、
ますます貯蓄が盛んになっていくのでしょうが、
貯蓄という資源が、有効活用されることはないでしょう。
アメリカ人から見れば、
「そんなに貯金が楽しいのか」と見えるかもしれません。
アメリカでは、借金をしてまでも消費をするという「借金文化」があります。
こうした「借金文化」にも問題がありますが、
かつて日本のバブル経済の時は、
やがて日本のGDPがアメリカに追いつくのではないかと言われましたが、
今は、日米のGDPを見ると、アメリカに大きく引き離されてしまいました。
アメリカのGDPは、「借金文化」に支えられているという側面がありますが、
「貯金ばかりしていると経済成長しない」という日本経済と対照的であります。